シェアハウスソーシャル・キャピタル調査レポート

調査レポート
調査結果サマリー

調査レポート第1回のテーマは、シェアハウス入居者の“ソーシャル・キャピタル”(※参考「調査日誌 第5回 ソーシャル・キャピタルとは」)に関する調査結果について、解説してゆきます。

調査の方法

シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルを定量的に測定し、一般の生活者(特に単身者)と比較するため、【比較資料】に挙げた過去の調査との比較を念頭にアンケート調査を実施しました。

構成要素分類アンケート設問項目
信頼一般的な信頼一般的な信頼度
相互信頼・相互扶助旅先での信頼度
付き合い・交流近隣での付き合い近所付き合いの程度
近所付き合いのある人の数
社会的な交流友人・知人との職場外での付き合いの頻度
親戚との付き合いの頻度
スポーツ・趣味・娯楽活動への参加状況
社会参加社会参加地縁的な活動への参加状況
ボランティア・NPO・市民活動への参加状況

今回は【比較資料3】調査に則り、信頼、ネットワーク、互酬性の規範の3要素でソーシャル・キャピタルが構成されるものとして測定しています。「信頼」は“他人に対する一般的な信頼、旅先や見知らぬ土地での信頼”、「ネットワーク」は“近隣での付き合いや社会的な交流などの付き合い・交流”、「互酬性の規範」は“互酬性の表れとして社会的活動への参加を捉えた社会参加”とされています。

このような調査方法で求めたシェアハウス入居者のソーシャル・キャピタル各要素について、【比較資料3】調査と単身世帯の年齢(5年毎)・性別(男女)の構成を揃えて比較し、【評価方法】に示す3つの手法で有意性の評価を行いました。

それぞれの評価結果は、
○…シェアハウス入居者が高い ×…比較対象者が高い ━…有意な差は認められない
として示されます。

※ただし過去調査は全国を対象としており、都市部に集中するシェアハウス入居者とは地域性の差が出ることを考慮しなくてはなりません。

調査結果

それでは、シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルに関する調査結果を確認してゆきます。

1.信頼

一般的な信頼度

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
一般的な信頼度

一般的な信頼度は、いずれの評価方法でも「高い」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、他者に対する一般的な信頼感は高いようです。

旅先での見知らぬ人への信頼度

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
旅先での見知らぬ人への信頼度×

旅先での見知らぬ人への信頼度は、「評価方法により異なる」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、目立った違いは無いようです。

2.付き合い・交流

近所付き合いの程度

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
近所付き合いの程度

近所付き合いの程度は、いずれの評価方法でも「強い」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、近所付き合いの程度は充実しているようです。
なお、ここで言う“近所付き合い”はシェアハウス内の交流ではなく、近隣住民との交流の事を指します。

近所付き合いのある人の数

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
近所付き合いのある人の数

近所付き合いのある人の数は、いずれの評価方法でも「多い」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、近所付き合いある人の数は多いようです。

友人・知人との職場外での付き合いの頻度

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
友人・知人との付き合い

知人・友人との付き合いは、いずれの評価方法でも「多い」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、友人や知人との交流は盛んなようです。

親戚との付き合いの頻度

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
親戚・親類との付き合い

親戚・親類との付き合いは、いずれの評価方法でも「多い」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、親戚・親類との付き合いは盛んなようです。

スポーツ・趣味・娯楽活動への参加状況

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
趣味・スポーツ活動への参加×××

スポーツ・趣味活動への参加状況は、いずれの評価方法でも「少ない」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、スポーツ・趣味活動への参加は少ないようです。

3.社会参加

地縁的な活動への参加状況

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
地縁活動への参加××

地縁活動への参加は3つの評価方法のうち2つにおいて「少ない」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、地縁的な活動への参加は少なめであると言えそうです。

ボランティア・NPO・市民活動への参加状況

 単身世帯 年齢・性別調整
iiiiii
ボランティア・市民活動への参加

ボランティア活動への参加は、3つの評価方法のうち2つの評価方法において「多い」という結果です。
同じ年齢・性別構成の単身世帯と比較して、ボランティア活動への参加は活発と言えそうです。

【総合評価】
  1. 同じ年齢・性別構成の単身者と比較して、総合的にソーシャル・キャピタルが高い
    シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルは、一般の単身世帯と比較して6項目で高く、2項目で低い、1項目で評価できないという結果となりました。総合的にはソーシャル・キャピタルが高いという事が言えます。
  2. 「一般的な信頼度」「友人・知人との付き合い」が高い
    シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルは、一般の単身世帯と比較して「一般的な信頼度」と「友人・知人との付き合い」が特に高いようです。組織の外の人との交流を活発化する“橋渡し型ソーシャル・キャピタル”が豊富であると言えそうです。
  3. 「趣味・スポーツ活動への参加」「地縁活動への参加」が低い
    シェアハウス入居者は単身世帯に比べて「趣味・スポーツ活動への参加」が特に低い結果となりました。シェアハウス内にコミュニティを持っているためか、団体や組織への参加欲求が抑えられるのかもしれません。
【参考】シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルと入居期間・入居動機の相関関係

下記は、シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルと入居期間・入居動機の相関関係を分析したものです。

相関係数(Spearmanのρ)

SC居住期間[入居動機]
入居者との交流
[入居動機]
外国人との交流
[入居動機]
共用空間
SC相関係数1.000-.019.232**.186**.105*
有意確率 (両側)..665.000.000.035
居住期間相関係数-.0191.000.053-.111*.046
有意確率 (両側).665..299.029.367
[動機入居]
入居者との交流
相関係数.232**.0531.000.072.051
有意確率 (両側).000.299..146.301
[入居動機]
外国人との交流
相関係数.186**-.111*.0721.000-.121*
有意確率 (両側).000.029.146..014
[入居動機]
共用空間
相関係数.105*.046.051-.121*1.000
有意確率 (両側).035.367.301.014.

**. 相関は、1 % 水準で有意となります (両側)。*. 相関は、5 % 水準で有意となります (両側)。

この結果は、シェアハウス入居者のソーシャル・キャピタルと居住期間の間に相関関係が認められず、一方で入居動機とは有意な相関関係が認められる事を示しています。
この結果を素直に解釈すると、シェアハウス入居者の高いソーシャル・キャピタルはシェアハウスに住む事によって高まるという事ではなく、ソーシャル・キャピタルの高い人がシェアハウスを住まいとして選択している傾向がある、という事になります。誰でも住むだけで交流が充実するというわけではなく、シェアハウスでの交流に価値を感じる人が集まるからこそ、充実したコミュニティが生まれるのかもしれません。

【比較資料】
  1. 内閣府(2003年):「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」
  2. 内閣府(2005年):「コミュニティ再生機能とソーシャル・キャピタルに関する研究調査報告書」
  3. 株式会社日本総合研究所(2008年):「日本のソーシャル・キャピタルと政策〜日本総研2007年全国アンケート調査結果報告書〜」

※上記の調査はソーシャル・キャピタルを一貫した捉え方の元で経年的・定量的に測定しており、今回の調査結果に対する有意義な比較対象です。

評価手法

「i」…信頼は上位1項目、付き合い・交流は上位2項目の割合、社会参加は上位1項目の選択割合で評価
「ii」…Σ(得点i×割合i)で評価
「iii」…1,2,3の分布を理論値として適合度検定して評価

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